4. 放射線防護策の選定と実施

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人工的に発生させた放射線(人工放射線)は人間の諸活動に伴って発生する放射線であり、全ての被曝が放射線防護の対象となる。そこで、放射線被曝を伴う行為を導入・実施などする際は、放射線防護の目標達成のため放射線防護体系(system of radiological protection) の三原則を遵守する必要がある。

放射線防護体系の三原則
  1. 行為の正当化(justification of practice)
    「いかなる行為も,その導入が正味でプラスの利益を生むものでなければ採用してはならない」
  2. 防護の最適化(optimization of protection)
    「すべての被曝は,経済的及び社会的な要因を考慮に入れながら合理的に達成できる限り,低く保たなければならない」
  3. 線量限度(dose limitation)
    「医療被曝を除く,すべての計画被曝状況では個人の被曝は線量限度を超えてはならない」

さらに、モニタリング(monitoring)により、放射線源、環境および個人の管理が厳重に行われていることを確認しなければならない。

なお、人工放射線の対として、地球誕生以来生活環境に存在している放射性同位元素からの大地放射線と宇宙からの放射線である宇宙放射線を合わせて自然放射線と呼ぶ。自然放射線による被曝により、人々は実効線量で世界平均合計年間2,400 μSv(=2.4 mSv)前後の被曝を受けているとされるが、自然放射線による被曝は人為的にコントロールすることができないために放射線防護の対象から外されている(規制除外)。

放射線管理とモニタリング

被曝は、線源-環境-人が相互に関わり合う中で生じることから、防護措置も1線源管理、2環境管理、3個人管理の三つに分類される。このうち線源管理が最も効果が大きく、防護策を講ずる上で最も優先させるべきである。

さらに、各管理に対応した以下のモニタリング概念が存在する。

1 線源モニタリング(source monitoring)
放射線源の健全性、管理状況を確認するために行なわれるモニタリングを言う。最も基本的なモニタリングである。
2 環境モニタリング(environmental monitoring)
施設内の作業環境あるいは施設外の一般環境で行なわれるモニタリングであり、線源の管理状況を確認し、環境安全が測られていることを確認するために行なわれる。
3 個人モニタリング(individual monitoring)
直接、作業者個人に着目して行なわれるモニタリングで、各作業者の線量が基準以下であることを確認するために行なわれる。一般公衆に対する個人モニタリングは、大規模事故などのごく特殊な場合を除いて実施されることはない

被曝対象の区分

放射線防護の観点から被曝の対象は医療被曝、職業被曝、公衆被曝の三つに分類される。

職業被曝

放射線業務従事者または放射線診療従事者が、業務の過程で受ける被曝を職業被曝(occupational exposure)と呼ぶ。職業被曝に対する防護の責任は、事業者と作業者自身にあり、職業被曝をする人々は被曝管理、健康管理、定期的な教育・訓練を受けることなどが義務づけられている。被曝線量に対しては、法令で線量限度が決められており、放射線業務従事者はサーベイメーターなどを装着し、線量限度を超えないようにしなければならない

公衆被曝

職業被曝、医療被曝以外の被曝、すなわち、原子力・放射線利用に伴う一般の人々の被曝(例えば原子力施設の周辺の住民の被曝など)を公衆被曝(public exposure)と呼ぶ。公衆被曝に対する防護の責任は、公衆被曝をもたらす放射線源を利用する事業者にあるが、職業被曝とは異なり、公衆の構成員の一人ひとりを管理(個人被曝管理)することは実態として難しいため、公衆の放射線安全が確保されていることは、線源モニタリングと環境モニタリングによって確認される。つまり、公衆被曝では基本的に個人モニタリングは行なわれない。

医療被曝

医療の現場における、患者への病気の治療を目的とした意図的な放射線照射による被曝を医療被曝(medical exposure)と呼ぶ。医療被曝に対する防護の責任は、事業者(施設の責任者)および実際に放射線診療に関わる医師と診療放射線技師等によって行なわれる。

医療被曝には、職業被曝や公衆被曝に適用される線量限度は存在せず、線量は防護量である等価線量実効線量(単位:シーベルト[Sv])ではなく全て吸収線量(単位:グレイ[Gy])で表される。さらに、法律で規制される被曝限度には、医療被曝によるものは含まれない